麻人 「あかね、君のことが好きだ…」
あかね「……わ、私もっ……私もね、麻人のこと……」

 それから始まった俺達の関係。
 4年間の交際期間を経て、大学を卒業と同時に、俺たちは同じ屋根の
 下で暮らすことを決めた。
 俺は出版社へ就職。あかねは夢を実現させるために専門学校へ。

あかね「私の絵と麻人と文章でね、一緒に本を作るのが夢なのっ♪」

 あかねの笑顔。俺の一番大切な宝物。一番失いたくない物。
 どんなに忙しくても俺たちはお互いを信頼しあっていた。愛し合っていた。
 こんな愛しい日々がずっと続くものだと思っていた。
 そう、アイツが来るまでは……。

 ――数日後。

麻人 「ただいま……」

 扉のバタンと閉まる音だけが玄関に響く。
 しばらくしても答えは返らなかった。
 返ってくるはずの答えが無いことに違和感を覚える。

麻人 「……………」

 あるはずの靴が無い。部屋の方にも気配は感じられない。
 そこにあるのは静寂だけ。
 張り詰めた空気が俺を不安にさせる…。

麻人 「(おかしい……。今日はバイトは休みのはずなのに……)」

 そういえばアイツの靴もない。

麻人 「(一緒に出かけているのか……?)」

 そう思うと胸がチクチクと痛む。
 ……思わずよからぬ事を考えてしまう。
 胸の痛みがズキン、ズキンという鈍い鼓動に変わる。
 アイツとあかねは幼馴染同士だ。そんなことあるはずが…。

麻人「どこに行ったんだ、あかね……」

 俺はガランとした部屋に佇み、一人呟いた……。