「 わわっ!
 お姉ちゃん麻人に何やってんのよーっ!!
 私の目が届かないところで麻人をいじめる
 なんてっ!!
 コラッお姉ちゃん、麻人を離しなさい!
 私が相手だよっ!!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

[亜弓] 「ほらっ、何ぼーっとしてるのよ! 始まるわよ!!」

[麻人] 「あ、はい」

     俺は亜弓さんに肩を組まれ、がっちりと拘束される。
     そのまま一緒にプロレス観戦するしか選択肢は
     残されてなかった……。

[亜弓] 「わかる? プロレスっていうのはね!
      男と男の魂のぶつかり合いなの!
      男の生き様なの!!
      そこにはちゃんとストーリーがあって、血と汗と涙で
      積み上げてきた歴史があるのよっ!!」

[麻人] 「そ、そうなんですか……」

     一方的にプロレスの素晴らしさを説く亜弓さん。
     俺はあまり詳しくないので、話に合わせて相槌を
     打つ事だけしか出来ない。

[亜弓] 「ほーらほらほら!
      麻人くんもプロレスが好きになってきた!
      てゆーか、もう好きだよね!
      好きじゃないと泣かすわよ!?」

[麻人] 「あっ、亜弓さん。苦しいです……っ!」

     亜弓さんにヘッドロックをかけられ、気が遠くなる。
     この細腕のどこにこんな力が……。

[麻人] 「(あっ……頬に柔らかい感触が……。
      これは亜弓さんの胸……かな?)」

     どうかDVDが終わるまで、持ってくれよ……
     俺の意識…………。