「 ……あれ?
 この人どっかで見た事があるような気が
 するけど……。
 うーん、気のせいかな〜?
 麻人と一緒にお店に来てたような……?」

          「 あっ!そういえば麻人にこの人の正体を
           聞くのを忘れてたよ!
           こんな怪しい人を麻人に近寄らせるわけ
           にはいかないんだからね!
           絶対に正体を暴いてあげるんだから!」

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[麻人] 「……あれ?」

     ……と。
     駅から一歩踏み出したところで、
     俺は視界の隅に奇妙な人を見つけてしまった。
     似合わないグラサン。
     もう春なのに、マフラー。
     服も もこっとしていて結構な厚着をしているらしい。
     ……どう見ても怪しい。
     道行く人も、チラリチラリとその人を見やりながら
     通り過ぎていく……。
     だが……
     その奇妙な人に、見覚えがあるような気が……。
     はて……?
     仮装パーティ会場に向かうような人は、
     知り合いにはいないはずだけど……。

[??] 「……あ〜、麻人く〜ん♪」

     ……って、この間延びした声は。

[麻人] 「あ、彩音さん!?」

     見覚えがあるはずだ。
     その奇妙な人の正体は、彩音さんだった。

[彩音] 「麻人くん〜、どうして眼を逸らすの〜?」

[麻人] 「えっ……?
      い、いえ、つい本能的に……
      じゃなくてなんで彩音さん、
      そんな格好してるんですか?
      っていうかなんなんですか、その格好は?」

[彩音] 「ふふふっ、
      こうしてると私だってわからないでしょ〜?」

[麻人] 「いやあ、わからないというかわかりたくなかった
      というか……」

     まぁ彩音さんじゃなければという意味で、だが。
     見た目だけだと、かなり怪しい人だもんな……。
     まだ道行く人たちが、彩音さんに対して
     不思議そうな視線を送ってくるし……。

[彩音] 「これはね〜、変装してるのよ〜?」

[麻人] 「変装……? ですか?」

     確かに変な装いだけど……。

[彩音] 「亜弓とあかねが働いてる
      お店に行こうと思ったのよ〜。でも……」

     彩音さんの表情が憂いを帯びる。
     何かあったのかな……?

[麻人] 「……彩音さん」

[彩音] 「昼からずっとこうして探してるんだけど、
      お店が見つからないの〜」

[麻人] 「…………」

     ……一体何時間放浪してるんだ?
     しかも、この格好で……。
     ……探してる間くらいは脱ごうとは
     思わなかったんだろうか?
     そ、そこは彩音さんか……。
     深く考えても仕方がない気がする……。