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◆秋山直道の災難
「おつかれー!」
「じゃ、またなー」
いつもの部活仲間といつもの場所で交わす挨拶。
方角の違う僕は、部活の練習で火照った体を、心地よい夜風ですずしみながら一人夜道を歩く。
−そんなに急いで帰っても、誰もいないしな…
僕の両親は、今、出張に出ている。
父親は一人でいいと言っていたにもかかわらず、母親は「直道は一人でも大丈夫よ!」と言って、
父親についていってしまったのである。
ま、観光目的だとは思うけど…
初めての一人暮らしで、最初は戸惑ったが、今では結構、堪能している。
−今日は、夕飯、何を食べようかな・・・
−昨日は、何食べたっけ?
−あ、あの番組、録画したっけ?
ぼんやりと考えながら歩いていた僕の足に、一つの影がのびる。
そこには、煌々と輝く月を背に、一人の男が立っていた。
武士のような佇まいを漂わせるその男は、冷たく言い放つ。
「余の名は謙信。不知火謙信だ」
「顔を見られてしまった以上仕方がない……己の運命を呪うのだな」
僕はその男の言葉を聞きながら、自分の置かれた状況を理解した。
――殺される――
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